イタリア旅行に欠かせない交通手段は「鉄道」だが、
その鉄道を利用するにおいて、注意すべき点がいくつかある。
もっとも注意を払わなければならないのは盗難だ。
イタリアの各駅には改札がない。
なので、誰でもプラットホームに侵入し電車に乗り込むことが可能だ。
つまり、泥棒やジプシーも構内に入れるという事である。
ひと昔前までは一見してジプシーだと分かるような様相が多かったが、
最近はかなり工夫を凝らし、衣類からヘアスタイルまで
一般の人々と変わらない「今風」の格好をしているのでやっかいなのだ。
カップル風やビジネスマン風、
エリアや時期にあわせて遠足に来ている学生風と、
その手口もかなり巧妙になっている。
こちらに住んでいる人なら、
少し注意をすれば簡単に見分けられるのだが、観光客にはけっこう難しい。
先日、これらの問題を背景にイタリアの鉄道会社と公安委員会は、
駅構内と車内における利用客の安全性を今まで以上に向上していくと
発表した。特に犯罪の多い路線や駅、時間帯には警察の動因数を
増やしていくとしている。
ここ数年、鉄道警察と鉄道会社のコラボレーションの成果から、
駅構内にいるホームレスや乗車券を持たないサッカーの熱狂的なファン、
デモに参加する人たちの数が徐々に減っていっている。
車内で行われる検札時においては、
乗車券を持たない人は乗車券と罰金を支払う義務があるが、
その件数は35%増えたとされる。
これまでにも検札は行われていたが、
徹底したものではなく、全車両を回りきれていない状況だった。
検札強化の影響からか、車内の集金件数と
切符売り場での販売件数が増えているようだ。
恒例ともいえる列車の遅れは、ここ近年で減少傾向。
例えば、11月1〜15日の統計によると、
5分以上遅れたトスカーナ州のローカル列車は100本中10本。
15分以上遅れたのは2%の列車のみと発表されている。
「ローカル路線は遅れるのが当たり前」というのが一般常識であり、
田舎に行くほど、南部に行くほどそれがひどくなることは周知の事実。
数年前から高速列車が25分以上遅れた場合は券面の50%が返金、
特急列車は30分以上、急行列車は60分以上遅れた場合は券面の30%が
返金されるようになり、それからは延着する列車が大幅に少なくなった。
また、高速と特急列車に関しては、
車内の冷暖房機が壊れていた場合も返金されるとなっている。
ただ、乗客は指定窓口で返金手続きを行い、
すぐに現金を返してくれるわけではない。
後日、「ボーナス」というクーポン券を自宅に送ってくるというシステムだ。
これがまた有効期限付きとなっているため、外国人観光客は泣き寝入り。
つまり、次回の列車のご旅行にこのクーポン券を是非ご利用ください、
ということなので、乗客はもったいないからと乗車券から
クーポン券分を差し引いた金額分を負担してまで小旅行を計画するか、
行けない場合はその券を捨てるかという2つの選択肢しかないのだ。
後者の場合は、返金の必要性がなくなるので鉄道会社にとっては
「ラッキー」ということになる。
どちらにしてもそう大きな負担がかからないようになっているわけだ。
1905年に設立されたイタリア鉄道会社は1992年に国が株式を保有する
株式会社となった。現在は、高速新線を建設して混雑を緩和することを
目的としたプロジェクトが進んでいる。
欧州各国の高速新線のネットワークと接続し、フランスやドイツや
スペインの新線と統合した高速鉄道線のネットワークを目指している。
フィレンツェ在住 中林紀子
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