イタリア撮影事情

雑誌の海外特集や海外で撮影されたテレビ番組を
目にする機会はあると思いますが、現地でそれらを
オーガナイズする「撮影コーディネート」という仕事
が存在することをご存知の方は意外と少ないはず。

アッティコも系列会社のイタルメディアも、
もともとは撮影専門のコーディネート会社。
そこを原点とし、現在は日本企業のイタリアでの
視察旅行やイタリアでの日本企業イベント、
日本でのイタリア関連イベントや講座の企画、
オーガナイズと幅広く手がけています。
(とは言え、イタリア専門のニッチな市場ですが…笑)

テレビ制作に携わる方々は様々な国で撮影されて
いますが、なかには裏金を用意することでロケが
スムースになったり、威圧的な政府高官が現場に
現れておねだりしたり、撮影OKだったはずが
突然NGになったり、危険区域のため軍隊の護衛
がついたりなど、ちょっと日本では考えられない
状況が撮影する国によっては多々あるようです。

イタリアは、一応、先進国(苦笑)なので、極端な
ケースに遭遇することはありませんが、文化遺産が
世界で最も多い国であるがゆえ、撮影許可取りには
毎回膨大な時間を要し、苦労させられます。

例えば…、ローマのパンテオン。
石畳の上(パンテオン前の広場)はローマ市の管轄。
カメラを構えながらじりじりとパンテオンへにじり寄り、
コロンナ(円柱)が並ぶエントランス(大理石の床)に
一歩踏み入れた途端「ピッー!」と笛の音。
そこは文化庁の管轄下なのであります。

国会前から脇にかけての通りは国会警備の管轄。
(コーディネート歴20年目にして最近知った…苦笑)
そこから1本入ってしまえば申請先はローマ市だし、
あっ、ここはローマ市だけどそこはバチカン市国ね。
駄目、駄目、そこから先は国鉄に許可取って下さい、
ってな感じです。でも、道路や広場にどこが管轄
なんて記載されているわけでもないし。

ローマ・テルミニ駅撮影のため、事前に許可を取り、
高額を支払った上で撮影しているにも関わらず、
まず警察、そして軍警察、次に民間の警備隊、
最後に駅員と、時間差でお咎めを食らい、
その度に撮影が中断する事態が発生し、
「撮影時間1時間しかもらってないのにー!」
「ちょっと横の連絡連携、どうなってるのよ!」
そう食ってかかったら連行されちゃったりね(苦笑)。

ローマ市管轄にしたって実質的なコンタクト先は様々。
最初の書類提出は同じ窓口でも、その後の日時とか
撮影立会人に関する詳細は各撮影場所とあなたが
直接やり取りしてね、と、こう来るわけです。
で、もちろん担当者はそう簡単には捕まらない。
「撮影料払ってるんだからさぁ、それくらいそちら
でやって下さいよ〜」という気持ちになります。

まぁ、でも、その代わり(と言っちゃなんですが)、
閉館時間の誰もいないウフィツィ美術館に入ったり、
ヘリコプターでコロッセオの上空を旋回したり、
日常ではお会いできない方々のお話しを伺ったり、
普段は立ち入れないような危険地帯に潜入したり。
そういうディープなイタリアを体験できるわけだから、
役得なのかもネ。。。そう思うことが大事なのです。

アッティコ・ローマ
村本幸枝