さすが世界遺産が集中している国、イタリア。
これをお金に変えない手はないですよね。
遺跡の維持や修復には莫大なお金がかかるし…。
イタリアはスチール写真にしても映像を撮るにしても
それが商業目的の場合には基本的に撮影料がかかります。
南イタリアはまだその辺のシステムがきちんと構築されて
いないのか、撮影無料の街がほとんどなのですが、
ミラノ、ヴェネチア、フィレンツェなどの主要都市は
けっこううるさくてその最たる街がローマ。
例えばパンテオン前のロトンダ広場でパンテオンを撮影
する場合はローマ市の許可が必要。撮影に夢中になった
ままじりじりとパンテオンににじり寄って大理石の上に
足を置いた瞬間に係官の『ピッー!』という笛の音。
そう、そこは文化庁の管轄なのです。
テルミニ駅も同様で一段ステップになっている
駅入口前に足を踏み入れた途端、警備員が走り寄り、
すぐに『許可書は?』と尋ねられます。
踊り場のステップ下はローマ市、ステップ上は国鉄。
サンピエトロ広場に続くコンチリアツィオーネ通りは
ローマ市の管轄だけど、サンピエトロ広場の石畳を
踏んだところでバチカン市国の許可が必要。
この教会は、直接、司教と。
ここはヴァチカン市国の広報と。
でも、ヴァチカン美術館の窓口は別ね。
そっちは国鉄。こっちは文化庁。
ここから先はローマ市、などなど。
撮影場所が多く複雑になればなるほど、
それに比例して許可取りは大変な作業になってきます。
加えて一本の電話じゃ済まないので、右手には受話器、
左手で携帯電話に対応する、毎日が続くわけです。
なんてたってひとつの情報を得るために平均10回の
電話が必要なんですから。こちらから折り返します、
そう言われたって十中八九はなしのつぶて。
自慢じゃないですが(自慢か?)、
今ではどの辺りで文化庁と値段交渉すればいいか、
どの付近なら許可なしで行けるか、
どこをどうくぐれば撮影料を安価に押さえられるか
すっと頭に見積もりが浮かぶほど(苦笑)。
あ〜ぁ、でもそんな技術を磨いてもね〜と、
ふと思う今日この頃。隠居生活はまだまだ遠い…。
アッティコ・ローマ
村本幸枝