フィレンツェのシンボルのひとつ、
ミケランジェロの傑作「ダビデ像」を
アカデミア美術館から移動させようではないか、
と、トスカーナ州の文化担当官コッキ氏が提案したことで、
美術界の著名人たちを巻き込み、論争となっている模様。
ダビデ像は、バチカンのサンピエトロ寺院にある「ピエタ」と
並ぶミケランジェロの代表作。
ルネッサンス期を通じてもっとも卓越した作品のひとつです。
このダビデ像をひと目見ようとアカデミア美術館を訪れる人の数は
年間130万人と言われていますが、街の中心部が小さく、
観光スポットが狭い範囲に集中するフィレンツェの旅行客対応策として
提案されたのが、このダビデ像の引っ越しなわけです。
現在、フィレンツェでは街の中心部からやや外れる旧レオポルド駅を
あらたな文化芸術のスポットとして開発しており、
2011年に完成する予定ですが、そこにダビデ像を移動させることにより、
旅行客の動きを中心街の外に広げようという思惑があるようです。
ロシアや中国などの新興国や、
ヨーロッパ内の格安航空券が増えて東欧からの旅行者が多くなったことで、
益々、観光客が増えているフィレンツェ。
観光が重要な街の収入源であるフィレンツェがこのままではパンクする、
との危機感からこのような提案が出されたようです。
しかし、ダビデ像移動の提案には美術界だけでなく、
市民の60%が反対しているようです。
アカデミア美術館のフランカ・フェッレッティ館長は、
「アカデミア美術館にダビデ像が置かれて135年。ダビデ像が彫られた
ドゥオーモにも、ダビデ像が飾られていたシニョリア広場からも近い
アカデミア美術館こそがもっともダビデ像に相応しい場所」とコメント。
バチカン博物館のアントニオ・パオルッチ館長も、
「イタリアの宝であるダビデ像に触れるべきではない」
との見解を示しています。
レオポルド駅周辺には現代美術館をつくり、
街なかとは異なるあたらなスポットにしては? との意見もあるようですが、
今回のダビデ像移動を提案したコッキ文化担当は、
「好むと好まざると世界中の人にとってフィレンツェはルネッサンスの街。
誰がわざわざフィレンツェに現代アートを見にくるのか」と反論。
ダビデ像移動についてはまだ却下されていませんが、
どうもことの流れから判断すると、最終的に軍配は反対派に上がりそう…。
アッティコ・ローマ
村本幸枝