『私たち、正式に結婚することになったの』
友人から吉報があったのは先週のこと。
新郎側の証人を私の友人、ロザンナが担当。
私の役目はなぜかカメラマン。
(うぅぅ…責任重い…、証人の方がよかったんだけど)。
カソリック教会は現在も離婚を認めていないので、
市の承認のもとに結婚をするのは、普通、二度目だったり、
初婚でも今さら式なんて…という熟年カップルがほとんど。
今回の私の友人カップルも知り合ってから17年、
いっしょに暮らし始めてから15年という、
すでに結婚しているも同然の年季の入ったカップルです。
ちなみに、イタリアは1970年代に正式に離婚が認められる
ようになりましたが、カソリック教会では二度目の結婚式は
挙げられないのです。
式はカンピドリオ広場にあるローマ市庁舎でも行えますが、
その他にローマ市が管理する、カソリック教会の管轄下でない、
いわゆる『神聖なる』とされていない、4つの教会で挙げること
ができます。私の友人が選んだのはカラカラ浴場そばの教会。
ローマ市からは市を代表する証人1名、市警察の警官が2名、
コーディネーターのような役目の人が1名、それに新郎新婦と
彼らの証人が1名ずつ。最少人数8名で式は成立しますが、
もちろん、招待客の席も用意されているので、賑やかな式を
挙げることも可能です。
でも、今回は上記の8名に、なんちゃってカメラマンの私が
加わり、列席者9名のみ。式は25日の10:00からと知らされて
いたので、まじめな日本人の私は、少し早めに会場入りして
カメラチェックをしようと、9:30に到着したら誰もいない…。
カメラを持ったTシャツ&ジーンズ姿のカジュアルなおっさんが
一人いるだけ。とりあえず、あっ、きっと他にもカメラマンを
頼んでるだわ、ほっ! ひと安心して尋ねてみると、彼はいつも
そこにいて1枚8ユーロで写真を売るフリーカメラマンだとのこと。
その内に新郎新婦、証人が現れ、とりあえず私たち側は全員集合。
ところが、肝心の市の職員が誰も来ない。
10:00過ぎてやって来たのは、おっさんの友人らしきフリー
カメラマンと称するその他2名のみ。
やがて、次に式を挙げる人たちのグループまで到着!
しかし、教会はあいかわらずカギがかかったまま。
『さすが、ローマね』なんて、最初は苦笑していた新婦の顔は
やがて青くなり、新郎&証人たちが携帯で市に電話をかけまくる
事態に。さんざんたらい回しにされたあげく、全員が同じ部署に
同時に辿りつき、携帯3機でそれぞれがクレームの嵐を!
不吉な知らせを示唆するかのごとく、
人懐っこい『黒猫』まで現れ、新婦のまわりをうろうろ。
もうここまで来るとまさに『イタリア映画』!
そこにやって来たスクーターのお兄ちゃん。
『いやぁ、すまん、すまん』でもなく、ふつーうに登場。
開口ひとこと『あれ? 10:30からだって聞いてるけど』。
その後、ぽつぽつと他の職員も到着し、
教会の扉は開かれ、式がはじまったのは結局11:00過ぎ。
誓いが読み上げられ、結婚指輪を交わし、書類に署名をし、
目出たく二人は正式な夫婦に。所要時間15分。待つこと90分。
実は今回の結婚、新婦は長い間望み、新郎は尻込みし、という
15年の年月の中でたどり着いたゴールインだったので、
私たちは心底ハラハラだったのです…。
アッティコ・ローマ
村本幸枝